写真学生のとき、エマルジョンナンバーがこれほど重要な要素なのだとは思わなかった。 エマルジョンというものを始めて知ったのも写真学生のときだった。「エマルジョンが違うと色が違う、感度が違う」。「ふうーん、商業写真ってそんな事まで気を使わなきゃいけないんだ、大変だよなー」当時、報道写真学科だった私にはどうでもいい事のように思えた。時は経って現在、フィルムを注文する時に真っ先に確認するのはエマルジョンナンバー。頼んだ物と違ったりしたらもう大慌てだ。 今は製造中止になってしまったが、 EPD には 4x5 のフィルムがあった。このフィルムを一段増感して撮影するという仕事が年に一度だけあって、そのために毎年決まった時期にテストしていた。公称感度は ISO200 だが、いつのエマルジョンもそんなに感度が正確にあるはずもなく、大体 ISO160 ぐらい出ていれば良い方だった。いつも色が出なく、まるで E-3 時代のフィルムを引っ張りだしてきたような上がりだった。 ところがある年、感度が ISO320、発色は抜群に良く、粒子も整っていて増感にもまあ耐えられるというエマルジョンが出てきた。いつも一緒にテストしていた先輩カメラマン(当時私はアシスタントだった)と狂気乱舞!すぐさま上司に報告して、プロラボに片っ端から電話して買い占めに走ったのだ。結局集まったのは 160 箱ぐらいだったか。最近はどのフィルムも安定して良くできているし、こんな体験をしたくてもできないだろうし、二度とないだろう。(2001.11記) |